ザ・ハウス@建築家 ザ・ハウスで建てた家

茨城県つくばみらい市A邸

設計監理:長谷川順持

家づくりのきっかけはいろいろありますが、Aさんは「結露」でした。当初住んでいたマンションは、冬になると結露で床にシミができ、カビも出てしまうほど。住みやすさとデザイン性を備えた自分たちらしい家を求めて、建築家という選択肢も取り入れたAさんは、2005年5月ザ・ハウスに来店されました。

倉に眠るAさんの手がけられた絵画を見つけた建築家・長谷川順持さんは、Aさんの希望でもあった「絵を飾れる家」にしよう!と見た瞬間に思ったようです。

結露は勿論のこと、空間の広がりや庭との関係性など、満足度は高まるばかりと語るAさん。出来上ってみると、建築家以外の選択肢は考えられないと語るAさんの家づくりについてお話を伺います。
家を建てようと思った経緯は?

年齢的にも結婚や出産などをきっかけにマンションや家を購入する友人が多くなり、私も中古マンションを購入。

そこでの暮らしも便利でよかったのですが、冬場の結露に悩んでいました。サッシもペアガラスではなかったため、冬場のサッシは文字どおりびしょびしょ!といった感じ。欠陥マンションではなかったのですが、床が結露でシミになることもあり、マンションの管理事務所に事情を説明して、断熱作業を施してもらったほどです。
茨城県つくばみらい市A邸/長谷川順持設計

撮影:冨田 治

決定的だったのは、北側の寝室にしていた部屋でのことです。ベッドのマットレスの裏側にカビが生えてしまったのです。当時、子供が3歳と1歳ということもあり、これでは家族の健康を害してしまう、アレルギーやぜんそくなどになってしまっては大変だと感じました。

何とか良い住環境をと考えていたところ、実家の土地があったものですから、マンションという選択ではなく戸建てを考えるようになりました。マンションは便利ですし、周辺の環境も生活しやすいものでしたが、室内の改造一つとっても一切自由にできるわけではありません。何より経年の劣化はどうしても避けられないだろうということもあり、同じローンを支払って生活するなら自分たちの納得のいく住環境を作っていこうという結論に至りました。また、父親も病気がちであったため、側に住むことを喜んでくれました。
茨城県つくばみらい市A邸/長谷川順持設計 当初から建築家に依頼しようとお考えだったのですか?

むしろ全く考えていませんでした。建築家との家づくりは「贅沢だ」とか「きっとべらぼうに高いだろう」というイメージがあったので、テレビや雑誌などを見ていても他人事のように思っていました。

最初はハウスメーカーの展示場をたくさん回りました。元々戸建てを考えたのも結露に悩んでいたためです。そんなとき新聞の広告欄で家づくりに関する書籍の紹介がありました。早速購入して読んでみると、湿気対策が家を長持ちさせるためにはいかに大切か、健康を考えれば建築工法がいかに重要かが切々と書かれていました。焦りにも似たような感情が湧いてきて、一時はこの本に書かれていた内容から「この工法で家を建てないとダメなのではないか?」とまで思っていたので、内覧会などにも積極的に参加しました。

無垢の木で、外張り断熱で、結露対策も万全で・・・。しかしデザインが全くだめなのです。今度はハウスメーカーのカタログなどを見て、少しでもデザインの良い物件はないか検討もしました。しかし「無垢の木」「外張り断熱」がなかなか見つかりません。住み心地の良さとデザインは共有できないのかと一時はあきらめかけました。
しかし、一生に一度の家づくりを妥協してしまっていいのか、何か良い方法はないかと、家内も真剣に考えていました。あらゆる情報を収集して、ようやく建築家という選択肢もあるのでは?という結論にたどり着いたのです。とは言うものの、この時点ではまだあくまで選択肢の一つであって、話を聞くだけ、見てみるだけ、というくらい。「7割方ハウスメーカー、残りの3割は、地元の工務店にお願いしよう。」という考えは変わっていませんでした。
建築家・長谷川順持さんにはどんなご希望を伝えたのですか?

結露対策のしっかりした家をお願いしました。家族の健康のためにもカビや湿気で悩みたくなかったのです。一生に一度の家づくりなので悔いを残したくないという思いも伝えました。気になっていた工法のメーカーの家は住みやすいのだろうけれど、デザインがどうしても受け入れられないということも伝えました。
そのメーカーの家は電気のスイッチがごちゃごちゃと配置されていて、およそ美しいとは感じられなかったのです。住み心地とデザインを共有させてほしいと伝えました。また、私は絵を描きます。これまでに手掛けた大きめの絵もたくさんありましたし、家内も私の作品を気に入ってくれていたので、展示したいとお伝えしました。

長谷川さんは本当に話を良く聞いてくれる方でした。ひとつひとつの話を聞いて具体的に形に表してくれました。コミュニケーションをしていてとても信頼できたし、楽しかったです。クリエイティブという言葉がとてもふさわしい方です。
また、スタッフの方も大変信頼のできる誠実な方でした。家内の生活導線のこだわりや、キッチンの環境についてもしっかりと聞き入れ具体化してくれました。収納についてもすっきり見えるようにとお伝えました。さらに外からの視線を気にせず、プライベートを守れるようにともお願いしました。そして、当然のことながら予算です。予算には限りがありますから、何とかおさえてほしい!とお願いしました。 茨城県つくばみらい市A邸/長谷川順持設計
実際に生活していかがでしょうか?

大変住みやすいです。リビングの天上がかなり高めで心地良く、照明をつけた夜の雰囲気もとても気に入っています。部屋数自体はそんなに多くありません。しかし、家族4人が生活する上で「本当にちょうどいい」のです。キッチンやその他の収納もアイデアが満載です。2階は一つの大きな部屋なのですが、クローゼットが可動式になっているので、これをうまく動かすと部屋を2つに仕切れ、将来的に2人の子ども(男女)が自分の部屋として使うことができるのです。

デザインで残してもらった庭も本当に使い勝手が良く、満足しています。芝を張りましたが、夏場はこの庭でのバーベキューが楽しみの一つになっています。

また、無垢の木の素材を多用しており、経年の味わいが深まる安心感があります。こうした自然素材に対するこだわりも住み心地の良さと無関係ではないと思います。室内のトーンも展示した私の絵画作品にしっくりなじんでいます。

何より、今まで悩んでいた結露などおよそ想像もつきません!宣伝するわけではありませんが、長谷川さんが考案した「どまだんシステム」は、特に冬場に効果を現します。家中どこに行っても(トイレもバスルームも)寒いところがないのです。ストーブなど一切いりません。

原理は夜間電力で涌かしたお湯を構造的に張り巡らされたパイプに通して室内を暖めるというものです。さらに、結露などの問題も同時に解消されます。オール電化なので、電気代が心配されましたが、夏場にエアコンを使用しても4000円程度なのには驚きました。冬場は20000円程度になりますが、年間を通すと今までのマンション生活から比べればだいぶ節約できています。まさに住み心地とデザインを手にすることができたといった感じです
茨城県つくばみらい市A邸/長谷川順持設計 ザ・ハウスを利用しての感想は?

選択肢になかった建築家との家づくりに出会わせてくれたことに感謝します。正直不安があったのですが、とにかく私たちの希望を叶えるべく多くの資料を提案してくれました。当時小さかった子ども2人を連れての来店は迷惑かなと思ったのですが、DVDを用意してくれたりと本当に親切にしてもらいました。大まかな希望を思いつくままに伝え、適切な建築家の方を何人か紹介していただけました。

実は、最初の面談相手は長谷川さんではありませんでした。他の建築家の話も聞いてみたいという希望を伝え、スムーズに対応していただきました。あの時、親切に対応していただいたからこそ、私たちも安心して家づくりを任せてもよいと思えたし、結果的に長谷川さんに出会うこともできました。
これから建築家と家を建てる方に一言

とにかく色々コミュニケーションをとることでしょう。家づくりは一朝一夕にはできないと思います。中には無駄に終わってしまう話もあると思いますが、その無駄の中から建築家の人たちは閃きを提案してくれると思うのです。自分たちの願いを2倍にも3倍にも膨らませてくれるはずだと思います。

実際、話を進める中で長谷川さんに気付かされたことも多かった。一生に一度のことですから、我儘になっていいと思います。多くの情報を伝えて自分自身をわかってもらった上で、悔いを残したくないという気持ちを伝えるべきだと思います。

建築家と家づくりをすると時間もかかります。私たちよりも後にハウスメーカーで家づくりをはじめた人たちが、先に入居していました。しかし、それだけじっくり進めるからこそ、自分だけの家づくりができるのではないでしょうか。焦らず、建築家の方に自分をわかってもらえるようなコミュニケーションをとってみて下さい。かけた時間に比例して、建てた家に愛着も湧くと思います。建て主も建築士も工務店もみんなが納得できる家づくりをするためにも、コミュニケーションが一番大切だと感じています。
建築家と家を建てるなんて全く考えてもいなかった私たちですが、今となってはこれ以外の選択肢はなかったかもしれないと思えるほど納得しています。建て終えた後にお得感が増してくるのが建築家との家づくり。どうせローンを支払うのなら、納得できる支払い方をしたほうがいいと思います。これから建てる方は色々と思い悩むこともあるかと思いますが、世界で一つだけの自分の家づくりを楽しんでほしいと思います。 茨城県つくばみらい市A邸/長谷川順持設計
長谷川順持 建築家・長谷川順持さんのインタビュー


はじめにAさんとお話して、どんなことをお感じになりましたか?

ご夫妻ともに静かにお話され、ご主人はまっすぐに目を見てお話になる礼儀正しい方でした。ご実家である茨城の宅地に伺うと、そこにはご両親の住居や倉などの点在する大きな農村風景。ご両親にお会いし、ご主人の「礼」の気質がよくわかりました。
具体的にはどのような形でご要望に応えていったのですか?

この住まいが形になるまではかなりストーリーがあるのですが、印象的な部分を記すと、まず、倉にご主人の「絵画作品」が多数ありました。重量も大きさもある連作など、その作品群の放つパワーは倉からほとばしり、観賞されるのを待っているかのよう。新しい住居にはこれら作品を数点でも良いから掛けたいと要望されました。
茨城県つくばみらい市A邸/長谷川順持設計 奥様からは広がりがあって開放的でありながら周囲からの視線に少し配慮してほしい、とのこと。大きな壁を要する展示計画と「開放性」という矛盾点の解決、既存の長大なブロック塀の印象も強く、どのような設計をしても、ブロック塀の印象に負けそうです。こうした問題点を、逆に「テーマ」に変えてみようと設計ははじまりました。
Aさんとのお打合せはいかがでしたか?

大きく方向性の違う案を2案こしらえて、その特徴を説明しました。その内の1案と寸分違わぬ住宅に完成しているということは、計画案へのご夫妻の「選択眼」の強さを示しています。すなわち、基本設計がもっているテーマや特徴への深い理解です。工事見積が出た後の予算調整の際にそれが明確になるのですが、通常「設計者」が意図的にコントロールする仕様変更も、この案のテーマに関わる部分はご夫妻が妥協せず「残して下さい」という姿勢で、その熱意に前進させていただいた記憶があります。
アーティストとお呼びするにはあまりに穏やかな雰囲気のご主人。朗らかな奥様、そして素直で元気なお子さん達が、開放的な周囲の自然を背景に「アートと暮らす家」になりました。


これから建築家と家を建てる方に一言

これまで多くのお客さまにお会いし住まいを創ってきましたが、それぞれが「生活感性」とでも呼びたい感性と、独自の価値判断を持っていらっしゃいます。一般的にはこうだから、ということにこだわらず、自分たちが「大事にしたい」と考えていることをどんどん「解放」してみるとよいでしょう。その解放された想い/具材を、結びつけ整理して、オリジナルの「出汁/だし」で煮込み、あらたな「具材/触媒」「スパイス」なども加えて料理するのが私たちの仕事といえましょう。



所在地:茨城県つくばみらい市
設 計:長谷川順持建築デザインオフィス(株)
施 工:(株)TH-1
竣 工:2007年12月
敷地面積:236.83平米(71.64坪)
延床面積:137.86平米(41.70坪)
茨城県つくばみらい市A邸/長谷川順持設計
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