建築家コラム

自邸で新たに気づいたこと

住まいと仕事場が混ざった、私たちの生活

2020.06.17

住まい兼仕事場の家リビング

友人から「コロナショックを想定した家」とまで言われた自邸

私事ですが昨年、自邸を建てました。
起伏のある丘陵地の大きな桜の木のある小さな公園に面している敷地で、建物の建つ地盤面は道路から一段下がっています。道路面と同じ高さの2階にアプローチを設け、2階は自身と照明デザイン事務所を営む妻の仕事場。1階は住居となっています。
昨年9月に住まい始めてからも、仕事の合間に家具をつくったり、徐々に庭に植物を植えたりして、少しずつ住まいを整えながら過ごしていました。

住まい兼仕事場の家外観

そんなところにコロナ・ショック。私たちもスタッフをリモートワークに切替え、オンライン打合せを導入し、小学生の二人のこどもも常に自宅にいるようなりましたが、元々が自宅に仕事場がある環境ですので、それ以外はほとんど生活に影響がありません。友人からはまるでコロナ・ショックを想定した家だとまで言われています。

住まい兼仕事場の家の庭

今回の出来事で多くの方が、働く環境・生活の仕方に大きな影響を受けているものと思います。今回、はじめて自宅勤務を経験した方、環境づくりに苦労されている方も多いと思います。スペースが足りていない方も多いでしょうし、家族人数分の個室をつくれても、そこに籠もりすぎること自体が、他の家族のストレスになることもあります。どうも、単純に一人こもれる書斎・個室をつくれば解決するという問題でもなさそうです。家族の為の家だったはずなのに、家族でずっと過ごすのが成立していないことに初めて気づいた方も多いのではないでしょうか。

住まい兼仕事場の家書斎

ライフスタイルに合わせて計画した新居

住まいと仕事場が混ざった私たちの生活は、実は自邸を建てる前から続けていたものです。私と妻それぞれにアトリエ事務所を独立し、結婚してからは暫定的に自宅で仕事をしていましたが、こどもが生まれてからもそのスタイルを継続。賃貸の一軒家に引っ越しながらスタッフも迎えつつ、徐々に自宅兼事務所という生活・仕事のスタイルをつくりあげていきました。

住まい兼仕事場の家キッチン

新しい家はそのライフスタイルに合わせて計画した一つの回答です。部屋ごとの機能性もある程度必要ですが、それよりも「この場所は南北両側の庭につながる場所だからリビングにしよう」「北側に庭とその先の空を眺められる位置にキッチンを」「北の庭には食べられる植物・植木を植えたい」「リビングから半階上がって少し距離がとれる明るいこの場所はこどもの部屋かな」「一番暗い部屋を寝室に」「洗面・浴室を日の当たる場所にすると洗濯物も乾かせるね」「半地下は涼しいのでパントリーや納戸に良いけど、本や漫画を読むスペースも欲しいな」「テントで寝るには南側の庭だ。」「街と繋がりやすい2階を仕事場にしよう。」「公園からも仕事している風景がよく見えるし昼間大人がいるのは公園で遊ぶこどもたちにとっても良いかもね」「バルコニーで珈琲を飲みたい」といった身体的といいますか動物的な感覚で場所をイメージしながらつくっていきました。ある意味、あまり使い方を決めすぎないおおらかな設計方法です。仕上げ材や家具も大事な要素ですがあまり内向きに考えすぎず、外部・庭との関係性でそれぞれのスペースの個性をもたせているのも特長です。

住まい兼仕事場の家書斎 住まい兼仕事場の家洗面所

機能から決めない、ライフスタイルを当てはめていく家づくり

皆さんが戸建て住宅やマンションに住もうとするとき、○LDKという表示を見ながら、家族それぞれの個室と使用目的や家族のそれぞれの個室を割り振っていく、言ってみればライフスタイルを部屋の記号に当てはめていく方法をとっていることが多いと思いますが、おそらくそれと逆のアプローチです。

機能から決めていないので、例えば完全に職住を分離しているわけでもありません。2階の仕事場は内部階段で緩やかに1階のリビングにも繋がっていますし、仕事場にはフリーなスペースもあるので、こどもも2階で勉強をしたり絵を描いたりしています。遊び・仕事・勉強・読書・工作・日曜大工・演奏・植木いじり、など家族皆がそのときどきで思い思いの居場所をみつけて過ごしています。
「仕事に集中できない」と思う方もいるかと思いますが、こどもも何かに集中しているとあまり邪魔には感じないものです。こども自身も親の仕事の集中度をみて、適度な距離感をなんとなく理解してくれるようになります。(もちろん完璧ではないですが!)

住まい兼仕事場の家階段

続くコロナショックの為に考えておくこと

この文章は4月に発令された全国への緊急事態宣言の解除後に書いていますが、どうもこれで完全収束するとは思えませんし、残念ながら第二波、第三波とコロナ・ショックは続く可能性が高そうです。また今後、別のパンデミックもあるかもしれません。単に元の生活に戻ることを考えるのではなく、この機会に新たなライフスタイルとそれを支える家について考えておくことがとても大事なことだと思っています。