在宅勤務と暮らしの在り方

デザインライフ設計室
青木 律典

多くの方が既に感じていることと思いますが今回の新型コロナウィルスの感染拡大により私たちの生活に大きな変化が起こりました。そしてこの変化は一時的なものではなく、形を変えながら今後も継続していくと思います。
今までは朝早く出かけて夜遅く帰ってくる生活が日常という方が多かったのではないでしょうか。これからは通勤という行為が減り、自宅で仕事が出来るようになり、自分の自由な時間が生まれることもありそうです。そうなると、住まいの色々なことが気になりはじめます。今までは家にいる時間そのものが少なかったので気づかない、気にしないことが当たり前でしたがこれからは嫌でも細かなことが気になってしまうのではないかと思います。
住まいについては在宅勤務ができる環境が必要になります。継続的に自宅で仕事をするのであれば、環境を整えることが不可欠です。勤務形態は様々だと思いますが、落ち着いてオンライン会議に参加したり、家族に邪魔されずに作業に集中できることが必要になると思います。一方で自宅にいる時間が長くなるのであれば、仕事以外の時間を快適に楽しく過ごせる工夫がある住まいの方が暮らしが豊かになれるのではないでしょうか。

写真は私が設計をして既に完成した住まいです。ダイニングの横に畳敷きの図書スペースと作業場所をしつらえました。個室やLDK以外にプラスαの場所があることで暮らしにゆとりと奥行きが生まれます。私たち建築家は暮らしが豊かになる住まいを考えて続けているので、今回のような状況でも住まいに対応力があることがわかりました。

住まい以外に視点を移してみると、在宅勤務になったことで自宅から出る機会が極端に減ったという方は多いと思います。今までは出勤することが外出することであり、移動のついでにお店に立ち寄ったり、食事をしたりという機会が多くあったことと思います。満員電車での通勤は大変でしたが、一方でほど良く息抜きができていたのかもしれません。
それが一転して在宅勤務やテレワークになると生活の仕方そのものが変わってきます。
長時間を過ごす住まいの快適性が求められることは容易に想像できますが、その他にも住まいの周辺の環境が豊かであることが大切な要素になってくるように思います。
自宅で根を詰めて仕事をしていると、息抜きのために自宅周辺を散歩するなんてこともありますよね。そんな時に改めて自分が住んでいる街や家の周辺環境の大切さに気が付くのではないかと思います。

私自身は今回のコロナウィルスのこととは関係なく、住まいと仕事場はほど良い距離感が良いとの思いから歩いて移動できる場所を選びました。拠点となる2つの場所は駅からの距離で決めるのではなく周辺の環境に注目しました。今でも残る里山の風景、農園や神社など古くある緑を身近に感じられる場所が点在していること、川が流れ野鳥が飛ぶ風景、遠くに山並みが見えることなど、都心に近い割に緑が多く自然を身近に感じることができるところに魅力を感じて今の拠点を選びました。

既に同じような考えをお持ちの方から家づくりの相談を受けることが増えていることから、通勤という大きな縛りがなくなることで住まいと暮らしがより自由になり、柔軟に考えられるようになることを実感しています。これから在宅勤務が一般化することで、本当の意味で自分のライフスタイルに合った場所を選択して、豊かな人生を送る方が増えていくと思います。その豊かな人生に建築家住宅が寄与できることは多くあると感じています。
