別荘がある暮らし

2021.12.02

「非日常」の場は、設計をスタートする時の条件としては少し難しいことが多いです。そのロケーションを生んでいる条件が、例えば海の近くであったり、生い茂る樹木であったり、眺望と引き換えの傾斜地であったり…。
それゆえ、その環境を活かしながら建築をつくるには、技術的にもプランニングの上でも、より総合的なバランスと判断が必要とされてくるのです。

@Koichi Torimura

別荘と住まいの境界線が曖昧になってきている、というのは最近良く感じることです。
週末にさっと出掛けてショートステイをする、二拠点生活をする、という用途はもちろんですが、ライフステージの変化を見越しながら、徐々に別荘としてつくる建築を主たる生活の場とされていくパターンや、別荘をつくるようなロケーションに「移住」されるという計画も手掛けています。

@Koichi Torimura

インフラとしてのネットワークやwebコミュニケーションが発達していくにつれて、リアルに「場」を共有しなくては出来ないことが減ってきました。そして、コロナ禍での生活を経験するなかで、今まで以上に「日常の美しさ」に意識を向ける方々が増えてきたのだろうと思います。

@Koichi Torimura

広い意味での<生活の豊かさ>とは、きっと日々の断片を大切にしていくことです。それは居住空間だけではなく、日々の食事であったり、着心地の良い服であったり、音楽であったり…。
仕事上のコミュニケーションがヴァーチャルに近づく一方で、その断片を構成するピースとして、いままで「非日常」として捉えていた場が「日常」になったら、と考える方は増えているのではないでしょうか。
広い意味での「別荘」は、都市生活との「距離感」を楽しむ場にもなり、生活の場にもなり、終の棲家にもなりえます。そして、それを支えているのは全て<リアルな>経験なのです。

@Koichi Torimura

生活の心地よさとは、常に五感で体感するリアルな瞬間と切り離されることはない。
そこに、生活空間を豊かなものにしていく本質があることは嬉しいことだな…と、生活を包む仕事をしている一建築家として最近よく思うのです。

@Koichi Torimura