光を楽しむ家

2015.10.19掲載

S様(東京都世田谷区)

新築

設計の途中で海外赴任が決まり、中断期間も合わせると実に7年の長丁場となったSさんの家づくり。住宅密集地であっても地下まで光が降り注ぐ家は、建築家の工夫が至るところにちりばめられています。Sさんに家づくりの秘訣を伺いました。

家を建てようと思った経緯は?

5年間の海外駐在から帰国し、そろそろ住居を購入した方がよいかなと思い始めていたときに大手ディベロッパーの高層マンションのテレビCMを見て、冷やかし気分でモデルルームに行きました。
多くの物件を見て回っているうちに冷やかし気分が本気になってしまい、また、目が肥えてくると要望も色々と出てくるようになり、なかなかこれというマンションに出会えませんでした。

そのような時、親しい友人がある建築家に依頼して家を建てました。友人の新居を訪問し、様々な工夫がされた家の話しを聞くうちに、それまでは視野に入れていなかった家づくりをしてみようと思い立ちました。

当初から建築家に依頼しようとお考えだったのですか?

家族の将来や自分が歳をとったときのことを考え、住む場所は東京都内と決めていましたので、大きな土地を買って一戸建てを建てるのは予算的に無理と思い込んでいました。

しかし、家づくりをした友人と話すうちに、建築家にお願いすれば狭い土地でも広く感じられる工夫や、要望を実現していただけるアイデアを提示してくれると聞き、建築家に依頼することを前提に建築条件のない土地を探しはじめました。

建築家・石川 淳さんにはどんなご希望を伝えたのですか?

「家族がつながっていられる家」が基本コンセプトでした。家族が集まるリビングルームはなるべく広く、また、家のどこにいても家族の気配が感じられる「心地よく明るい空間」をお願いしました。

住宅密集地ので、外からはプライベートな空間が守られるように、ただし家の中にいても外の空気が感じられるように、という難しいお願いもしました。具体的には、リビング・居室といった基本的な間取り以外に、シアタールーム・シュークローゼット・ドライルーム・地下クローゼット等を組み入れていただくようにリクエストしました。

実際に生活していかがでしょうか?

お願いした通りの「心地よく明るい空間」に暮らすことができて、とても快適です。

まず、2階にあるリビングが広く、とても明るくて気に入っています。
切妻屋根なので、その内側は2階リビングの高い天井の空間として有効活用されていますし、大きなガラスの壁など、広く感じられる工夫が至るところにあります。リビングの床の一部が透明プラスチックになっており、かつ階段からも光が落ちるので、2階天窓からの光が透明の床や階段を抜けて、地下室まで届きます。昼間は自然光で明るく、夜は電灯の光が白い壁や床に反射してとても綺麗です。

石川さんは、ご自身のブログでこの家の作品名を「光を楽しむ家」と名づけていらっしゃいます。
外からは家の中が見えないようになっていますが、「完全に閉ざされた家」にはならないようにいくつかの窓がついています。窓は磨りガラスで中が見えない配置なので、カーテンがなくてもプライバシーが守られます。また、窓を開けなくても家の中から月が見え、外の気配も感じられます。
まさにプロの技はすごいです。

そして、地下室から2階天井までつながっているルーバーは、この家の最大の特徴です。
地下室から見上げた景色は壮観です。ルーバーは光を通しつつ、仕切りにもなるので、光を有効活用しながら空間を広く見せるという、この家の象徴的な存在です。

ザ・ハウスを利用しての感想は?

どの建築家にお願いしたらよいかまったく見当がつかなかったので、どの建築家が私たちに合いそうかが相談でき、複数の方と面談できるシステムはとてもよいと思いました。

自分たちだけで本・雑誌・サイトなどを見て選ぶのは大変ですし、建築家を一人ひとり訪ねずにすみます。また、紹介料が施主側にはかからないことも助かりました。

これから建築家と家を建てる方に一言

自分なりに家づくりを振り返って、ポイントがいくつかあったと思います。

(1) その建築家の作品に住みたいかを基準に建築家を選ぶこと
素人が建築家を選ぶのは難しいことです。ただ、色々な方の作品を見ている間に、自分と合うかどうかが、少しずつ分かるようになりました。一流の建築家の方でも得手不得手があり、テイストも違います。
私は石川さんのある作品を見て、狭いスペースでも有効に使う空間の使い方、アイデア・発想が素晴らしいと思い、テイストが合うと判断してお願いしました。

(2) 建築家にはっきりと要望を伝えること
建築家は素人では考えもつかない様々なアイデアやテクニックを持っています。予算の制約はありますが、要望は遠慮せずにはっきりとお伝えするのがよいと思います。
ただし、方策については建築家にお任せし、「○○を感じる空間」、「○○のために使うスペース」と目的を伝える方がスムーズに進むと思います。方策を指定してしまうと、建築家の発想を狭めてしまうことがあるからです。
予算については、はっきりと初めに伝えるべきです。どうしても後から追加したいものが出てきますので、初めはやや保守的に予算を決めて、1~2割は増えてもよいように余裕をもっておくことをお勧めします。

(3) 建築家と信頼関係を築くこと
建築家と何時間話しても、素人は設計図を見ただけでは具体的なイメージを掴むことができません。部屋の広さの感覚も、最終的な段階でその場に身を置いてみてやっと掴めるというのが正直なところです。
本当に満足のいく家ができるかは、最後の最後まで確信が持てず、不安を感じるかもしれません。そこで重要なのが、建築家との信頼関係です。「十分に話したから、要望をすべて理解していただいているはず」、「あの方の作品だから信頼しよう」と、最後は自分で選んだ建築家を信頼することが大事ではないかと思います。

実は、設計の途中で再度海外勤務になり、設計図ができた段階で計画を一時中断したため、数年間、更地のまま土地を置いておくことになりました。その後帰国し、再度石川さんと設計を修正しましたので、計画期間は足掛け7年の長丁場になりました。
中断もあり、石川さんにはご迷惑をおかけしましたが、私自身、とてもよい家づくりができ、今は要望通りの快適な家に住んでいることを心から幸せに思っています。

本体価格

総工事費(税別)から、それぞれの敷地や建主の事情によって変動する解体工事、仮設工事、杭・地盤改良工事、引込工事、外構工事、冷暖房・空調工事、 その他建物本体に固定されていないものの工事を除いた金額。実際にかかる費用よりも坪当たり10~30万円ほど安く見積もられます。

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