家族のあり方にフィットした家
S様(長野県軽井沢町)
「車とバイクが趣味、生き甲斐、仕事をする活力の源!」とおっしゃるSさんの、家に対する必須条件がガレージのある家でした。条件や予算、住まい方を考えるうちに、建築家に依頼して家を建てることに決めたSさんは、2003年8月にザ・ハウスに来店されました。
趣味を存分に楽しみながらも、家族と一緒に過ごしたいと考えたSさん。建築家・山嵜さんは、ご主人がガレージで趣味の車をいじっていても家族が同じ空間にいることができるように、吹き抜けの大きなリビングとダイニングキッチンに、ガラスで隔てただけのガレージを設けました。
軽井沢に移住して、木々の緑、木洩れ日、鳥のさえずりに囲まれた家に住み、「すべての面で、我が家の家族のあり方にぴったりフィットした家ができたと思います。」とおっしゃるSさんにお話を伺います。
家を建てようと思った経緯は?
いつ、というのははっきりしないのですが、最終的には自分達の家を建てるというのが暗黙の了解、当然のことのようになっていました。
そのため以前住んでいた賃貸は、「いつか家を建てるまでの仮住まい」という意識が強く、家具やインテリアも、「家を建てたとき、家にマッチした、本当に気に入ったものを買う」と考えていて、とりあえず間に合わせ的なものが多かったのです。
また私(夫)の趣味がクルマ・バイクで、ガレージを借りたりしていたのですが、いろいろと不便なことが多く、いつかは自分のガレージが欲しいという夢を持っていました。
今までは市川という非常に便利なところに住んでいたのですが、我が家は都会にショッピングに出るより、自然の多いところへ出かける方が好きでした。また人ごみの中にいると夫婦二人とも頭が痛くなり、渋滞にはまればイライラ。元々街中には住めないカラダでもあったようです。
そのようなわけでゆとりのある広さの土地に、近隣と適度な距離感をおいた静かな環境で、緑に囲まれて暮らしたい、という希望が生まれ、軽井沢に家を建てようということになりました。
当初から建築家に依頼しようとお考えだったのですか?
家の必須条件に趣味のクルマ・バイクを収容する「ガレージ」というのがありましたので、ハウスメーカーの展示場に行っても、ガレージを設けることについて必ず質問をしていました。
その結果ハウスメーカーのプランでは、ガレージが予想外に高くなってしまいそうなこと、それに細かい要望には応えてくれそうにないことにも気がつきました。
また予算という壁もありました。これくらいの広さで、ガレージも設けて、これくらいの予算で、というと、ほとんど門前払い同様の扱いを受けたことすらあります。
そんなとき建築業界にいる20年来の友人が、家を建てるなら絶対に建築家に依頼すべきだ、とアドバイスをくれたのです。
ハウスメーカーは、いわば積み木を組み立てるようなもの、予め決まったパーツを組み合わせる範囲内でしか、自由が利かない。何千万も出すのに洋服でいえばツルシやイージーオーダでいいの?自分の生き方に合った家を、「フルオーダ」で作るべきじゃないの?「○LDKで○○平米!、便利なクローゼットも床暖房もオール電化もついてます!」ってまるで自動車のカタログみたいな宣伝文句。そこには、施主の家族のあり方、それに応じた住まい方なんて何もないでしょ、と。
確かに自分自身、生涯で一番高い買い物をするのにポンと買ってよいのか?という疑問がありました。ガレージ、予算、住まい方、諸々の面で建築家に依頼するしかない、と考えるに至ったのです。
建築家・山嵜雅雄さんにはどんなご希望をお伝えされたのですか?
まずはお金がありません、と(笑)。
予算はこれだけで、しかも広いリビング、2台分のガレージが欲しい、と無茶な要望を出しました。
これに対し山嵜さんは、「限界にチャレンジしましょう!、チャレンジするの、大好きですから」と答えてくれました。
より具体的な希望としては、妻が一日の中では夕方が好き、さんさんとした南からの太陽光よりも夕暮れ時の西日が好きで、西日の中でゆったりとしたい、という希望を出しました。
また空間のつながりとして、
・妻が料理等をしている間も、会話をすることができ、キッチンにいる妻が孤立しないような距離感。
・ガレージでクルマやバイクに接しているときも、家の中にいる家族から孤立せず、「ご飯できたよ~」といった会話のできる距離感、等をお願いしました。
実際に生活していかがでしょうか?
すべての面で、我が家の家族のあり方にぴったりフィットした家ができたと思います。前面道路のある東側ではなく、視野の範囲内に家のない西側に大きく窓が開いた間取りのため、家の中に居ると近隣や外を歩く人の存在が全く感じられず、とても居心地が良く感じます。
また大きく開いた窓から見える緑を見ながら、毎朝朝食を食べるのが何よりの楽しみです。日中も緑を見れば、それだけで心が安らぎます。
周囲の木々をなるべく残していただいたおかげで、夏でも緑が生い茂っているため、西日も強すぎず、とても涼しく過ごせました。
友人が来たときにも、ゲストを迎えるスペースと、プライベートのスペースとが明確に区切られているのもとても良いと思います。プラプライベートのスペースや収納のスペースの存在に、気がつかない人も多いくらいです。
我が家は出かける寸前まで部屋着でいて、外出直前に着替える、帰宅後はまっすぐ風呂に入る、という行動パターンなのですが、これに対応した玄関~洗面・浴室の繋がりに設計していただけたため、例えばバイクに乗って汚れて帰ってきたとき等も、家の中を汚す心配がなく安心です。
坪単価からいえば完全なローコストハウスなのですが、到底あの予算でできた家だとは思えません。近所の人は、我が家がすごいお金持ちだと思っているみたいです(笑)。
ザ・ハウスを利用しての感想は?
実は山嵜さん、最初の段階で作風を基準に選んだファイルには、入っていませんでした(笑)。
でも、コーディネータから「Sさんと相性が絶対によさそうな建築家がいるから」、と山嵜さんを紹介されました。この方がいなければ、山嵜さんと出会うことは無かったのです。感謝しています。
家作りは設計だけで半年、施工であと半年、さらにはその後も付き合いが続くわけですから、作風ももちろんですが人間的な相性がとても重要だと思います。
ザ・ハウスのサービスは一種のお見合いサービスだと思うのですが、そのサービス内容がシステム的に優れているのはもちろん、建築家と施主を引き合わせるコーディネータさんのコーディネート力という、人的資源も優れていると思います。
これから建築家と家を建てる方に一言
精一杯注文してください。難しい条件であればあるほど、建築家は頭をひねってすばらしいアイデアを出してくれると思います。
また、時間的余裕があるといいですね。我が家も、基本設計だけで5ヶ月近くかけました。最終的に決まった案は、山嵜さん曰く、「第1案、第2案はもうやりつくしたので、遊び半分で作ってみた」という第3案でした。
第1案、第2案が出たとき、もちろんそれぞれ私たちの要望を具現化してくれたすばらしい案だったのですが、ここをああして欲しい、こうして欲しいという希望が出ました。
ところが、この第3案が出たときは、夫婦そろってニコニコ、ほとんどその場で決まりでしたから。この第3案が生まれたのも、時間にゆとりがあったからだと思います。
はじめにSさんとお話しして、どんなことをお感じになりましたか?
ご主人が「車とバイクが趣味、生き甲斐、仕事をする活力の源!」と私たちに言い切り、趣味用の車と普段使用する車、それにバイク数台を所有されていました。
「車やバイクにもっと乗って走りたい。とはいえ家族を一日放っておきたくは無い。」とおっしゃり、趣味を大切にしながら家族サービスを放棄することなく家族の為の家をつくりたいとご希望される、趣味も家族も大切にする建主でした。
具体的にはどのようにご要望に応えていったのですか?
お会いした時には、敷地がまだ決まっておらず敷地選定からお手伝いさせて頂きました。建主家族が、数カ所良さそうな物件を見つけると、私達が一緒に現地に調査に伺い現敷地の軽井沢に決定しました。
基本設計の段階で2週間に1度お会いする形で私達の案を提示し、建主に提案した空間をシミュレーションしていただき、その結果を次の打合せでお聞きするという過程を通して、一つ一つディテールをまとめ、おおよそ5ヶ月かけてまとめていきました。
そして、ご主人が家族サービスを放棄することなく趣味の車をいじるスペースを設け、奥様がわざわざ遠方まで足を延ばさなくても、近所でサイクリングしたり緑を眺めたり鳥の声を聞いたり、自然の中でリラックス出来る環境に住まいを計画していきました。
Sさんとのお打合せはいかがでしたか?
自分達の考えをしっかり持っておられ、私達の質問にはご家族一致の意見をお話し頂けたので、何事も問題なくスムーズに進める事が出来ました。
これから建築家と家を建てる方に一言
建築家と建主のつきあいは、一生続くものだと考えています。建物を愛おしみ続けて下されば、建物は成長を続け空間は豊かさを増していきます。
家を建てるということは、人が生きていく中でそう何度も体験できることではありません。また家を建てることは人生の目的ではなく、家は生活するための一つの道具です。皆さんも、ゆっくりと時間をかけて後悔のないよう生み、育ててください。
データ
- 建設地
- 長野県軽井沢町
- 竣工日
- 2005年5月
- 設計
- 山嵜 雅雄
- 施工会社
- 笹沢建設株式会社
- 構造
- 木造
- 敷地面積
- 1052.96平米(318.5坪)
- 生活スタイル
- 単世帯住宅
- 撮影
- 平井 広行
- 種類
- 新築
本体価格
総工事費(税別)から、それぞれの敷地や建主の事情によって変動する解体工事、仮設工事、杭・地盤改良工事、引込工事、外構工事、冷暖房・空調工事、 その他建物本体に固定されていないものの工事を除いた金額。実際にかかる費用よりも坪当たり10~30万円ほど安く見積もられます。
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